ゴッホの手紙
こんにちわふ~。
なんかいいことないか子猫ちゃん。
そんなふうな題名のフランス映画だかがあったような。
子猫にかかわらず、子供は見てて飽きないなあ。自分の子供時代を垣間見れるような気になります。イタズラばかりの落ち着きないコネコでした。んでも、周囲の大人からこっぴどく叱られた記憶はなし。
いくら怒られてもまったく反省せず。すぐ忘れちゃう。
映画「世界で一番ゴッホを描いた男」公開中です。
中国深センの絵画複製地区と呼ばれる場所で、ひたすらゴッホのコピーを描きまくる男性をルポしたドキュメンタリー。中国の底知れぬ欲望パワーはミントの想像をはるかに超えてる。
チャイニーズは、マッチョな男でジャパニーズはひ弱な女だと評されたひとがいたけど、ますます草食系が進化しつつある日本人だとおもいます。
なにも草食系が悪いわけでもなんでもない。
ただガツガツしない草食系の比率が増えれば全体として国力は衰え、人口減は加速するのは確かでしょうね。
画聖ゴッホが弟テオに宛てた手紙を眺めてます。
自筆の手紙と日本語訳された双方。
クセなく非常に読みやすい文字なので、母国語であればスラスラ読めるんじゃないかな。画家だから字がうまいのか、もともと字がうまいのかわかりかねるけど。
文筆と絵筆が指の延長まで達してる。
こころの内が丁寧に記述されてます。そして文中に挿入されたイラスト。これがまた上手い。遠く離れたところに住む弟に生活の様子を伝えたいことがうかがえる。言葉だけでなくイラストまで織り込んであるのでリアル。
話題からずれるが、宮沢賢治記念館に何度か足を運んだことあります。生の賢治原稿やら手紙やらが展示されてました。もちろん、かなり年数経過してるから傷んでる。とても感慨深かった。心洗われたといえば大げさに聞こえるでしょうがね。
ミントのなかでは、ゴッホと賢治の世界には共通したなにかがある。
文書でも絵画でもゆったり時間かけたものか、ハイスピードでせかせか書いたのかすぐにわかるものね。弟に現況を理解してもらいたい熱意があらわれている。おそらくゴッホはなんにおいてもマメだったんじゃないかしら。
「親愛なるテオ。いっしょに過ごした日々は楽しかった。たびたびすばらしい散歩もしたし、あちこち見物もやったね」
画家を目指したときから、目に映ったものを描くのがクセになったのだろう。やるからには徹底してどこまでも満足するまでやりとげる凝り性。絵画のみでなく言葉まで駆使した。自分のきもちを受け止めてもらえる相手は弟だけだもんね。
「自然に打ち込み、知性のすべてを動員して作品の中に情感を表現するのだ。それが絵描きの義務だ」
おびただしい手紙をテオに送ったゴッホ。
九百通以上。
金銭の無心、話し相手のいない孤独感、生活状況の報告、絵画に対する新たな発見の数々。ほんと色んな気持ちが錯綜して黙っておれなかった。めちゃくちゃ孤立して孤独だったにちがいない。自分を語るだけでなく、弟への愛情と応援。いずれも言葉だけなのは歯がゆい。せめて文字だけでもいいから励ましてやりたい一心。自制なんて不可能。言いたいことを言いたいだけ言えばスッキリ。
「テオよ、牛のように忍耐強く歩め!」
何もせずにじっとしてるのは苦痛だったにちがいない。
手を動かして孤独を癒やしたのだろうか。
癒やしたというより、描いていれば、つかの間でもマイナス感情を忘れることができたはず。孤独は純粋芸術の友達ですね。ひとりぼっちほどつらいものはないもの。物理的な孤独が長期間のしかかれば、命まで危うくなる。メンタルの危機はおそろしい。
「家もまだあなたには居心地がよくないかもしれないが、少しずつよくする努力をしよう。ここへ来れば、あなたもぼくのように、秋の印象を描きまくる熱狂にとりつかれることになる」
厚塗り絵の具の濃厚タッチ。
無造作に塗りたくってるのではなくて、絵画の歴史や流行などをつっこんで研究したすえにつかみとった厚塗り技法。テーマだってゴッホの心情とシンクロ。嘘偽りない正真正銘ありのまま。
商業美術とはぜんぜん異なります。最初は販売目的だったのでしょうが、まったく売れないから、いつのまにやら描くことと生きることが重なってしまった。描いていられるうちは生きていられる状態。
「ぼくは百年たって後も、そのころの人々に生ける幻と思われるような肖像画を描いてみたい」
ゴッホイエローともいうべき黄色。
子供っぽい色であり、明るい未来を予期させるハッピーカラー。無意識に黄色を多用したのだとおもう。画面に黄色を描くことで正気をたもっていた。そう考えるとせつない。せつないけれど、せつなさこそ、ゴッホの特徴。どこまでも愚純に理想へ邁進した非凡。
じゃあ。彼の理想って何!?
実家は牧師だったんですよ。しかもゴッホは父のような生き方を模索したものの挫折。理想の根っこには信仰がひそんでる気がします。
ゴッホのような人生不器用でうまく人間関係を立ち回れず、四苦八苦して辛酸ナメナメ人は珍しくない。ほとんどの同じ穴のムジナたちは、信頼のおける長い付き合いのメル友すらいません。友達が欲しくて欲しくて仕方ないのに。。。
そして最後に弟テオをちょっぴり。
兄の才能に絶大な信頼をおいてたとはいえ、家族持ちの身。
しかも貧しい。
なけなしの給料を援助してしまうから、テオ夫婦はケンカばかりしてたとおもう。子宝に恵まれてからは、養育費だってかかる。やりくりできるもんじゃないよねえ。まさに運命共同体のひとこと。
兄ゴッホが天に召されてすぐ、後を追うように弟テオまで昇天。
「ぼくは絵に対してぼくの命をかけ、ぼくの理性はそのために半ば壊れてしまった。。。それもよい」